DCG(Definite Clause Grammar) では,自然言語処理において良く利用される省略,繰返しなどの表記ができないため,これらの表記を DCG に付加し,その文法を解析するためのパーサを prolog により開発した。左再帰を有する日本語制限文法の解析に利用するために,文末から文頭方向への解析機能も実現した。
機械翻訳では,辞書や翻訳規則の作成に多大な労力が必要である。この問題を解決するため,prolog を用いて,翻訳事例から自動的に辞書や翻訳規則を学習するための基礎的な研究を行った。
日本語と英語の対訳例文を幾つか与えておき,そこから表現の近い対訳例文を選択する。和文における差異と英文における差異を抽出することにより,差異の部分を日英単語間の対応付けであると見なして単語辞書を生成する。また,差異の部分を変数化することにより翻訳規則を生成する。これにより,非常に単純な日英単文間の双方向の翻訳を実現した。
prolog の問題点として,組み込み述語により提供される処理の種類が少ないこと,実行速度が遅いこと,などが挙げられることが多い。これに対して,LISP は prolog と比較すると実効速度が速く,組み込み関数も豊富である。そこで,prolog と LISP を融合するための研究を行った。
prolog インタプリタを LISP で実現し,任意の LISP 関数を prolog の述語として呼び出す機能を提供するとともに,prolog 述語を LISP 関数に変換するというコンパイル機能を提供することにより,組み込み述語の充実と実効速度の向上を図った。
グラフィカルユーザインタフェースは,ボタンやアイコン等のイメージ情報やメニュー等を提供し,それらを直接マウスで操作することにより,目的の処理を達成するため,ユーザにとっては使いやすいインタフェースである。しかし,開発者側からみれば,文字入出力を基本とするテキスト型ユーザインタフェースに比べ,構築が困難で,多量のプログラミングが必要であり,入出力デバイスやライブラリへ大きく依存しているため,汎用性が低いという問題点がある。この問題点を解決するために,テキスト型ユーザインタフェースを持つアプリケーションを統合して,グラフィカルユーザインタフェースを提供するアプリケーションを構築する支援システム UAI/X および XTSS を研究・開発した。
UAI/X は,グラフィカルアプリケーションに使用されるウィンドウの構成および各ウィンドウの持つ各種リソースを宣言的に記述することにより,グラフィカルアプリケーションを構築する簡易言語を提供する。XTSS は,手続き型の簡易言語により X Toolkit レベルの機能を命令として提供するサーバ XTS と,テキスト型アプリケーションと XTS 間および複数のテキスト型アプリケーション間の通信路を提供するクライアント XTC からなる,クライアント/サーバ型の支援システムである。
これらの支援システムを用いると,既存のテキスト型アプリケーションを利用して比較的簡単にグラフィカルユーザインタフェースを付加でき,テキスト型アプリケーションの開発とグラフィカルユーザインタフェースの開発を独立して進めることができるという利点があり,文字端末を使用しているユーザはテキスト型アプリケーションをそのまま利用できるという利点もあることを示した。
ファジィ制御は,人間の知識に近い形式で規則を記述できるため,非常に広い分野で利用されている。通常,制御を最適化するために,ファジィ制御規則表やメンバシップ関数を調整するが,調整するパラメータの数や自由度が大きいため,人手で高度な調整を行うことは非常に困難である。この問題に対処するために,教師データ,すなわち人間の知識を用いずに,制御実験を繰り返すことにより自動的に最適なファジィ制御規則表を学習する研究を行った。倒立振子を対象として,離散値制御および連続値制御のためのファジィ制御規則の学習を実現した。
離散値制御では,有限個の操作量の中から最適な操作量を選択することで制御を実現する。離散値制御のためのファジィ制御規則の記述方法を提案し,制御に失敗するまでにかかる時間がより長くなるように,その記述を調整するためのアルゴリズムを提案し,非常に少ない実験回数で規則が学習できることを示した。
連続値制御では,単に制御に失敗しないだけでなく,高い精度での制御を実現する必要があるが,ファジィ制御では小さな制御誤差が残ってしまうことが多い。この問題を解決するために,メンバシップ関数のレンジを動的に調整することにより,広い範囲で細かな制御まで可能となるファジィスケーリング制御を提案した。さらに,倒立振子では,角度と位置の制御誤差を0にする規則を学習するというという多目的最適化を行う必要があるため,多目的最適化問題を遺伝的アルゴリズムで解く schaffer の方法を応用することにより,高い制御精度を持つファジィスケーリング規則の学習が可能となることを示した。
学習者にとって最も易しい問題を学習履歴から判断し,易しい問題から出題することにより学習意欲を高めることを目的としたLISP言語教育用のCAIシステム LISP-CAI を構築した。
LISP-CAI は,テキスト環境で使用するものであるが,初心者にとってはグラフィカルユーザインタフェースで操作できる方が望ましいため,XTSS により LISP-CAI をそのまま用いて,グラフィカルユーザインタフェースを付与することで,ほとんどの操作を視覚的に行えるように改良できることを示した。
コンピュータの普及とともに,医療の現場で頻用される心電図,脳波等の医療画像データを手軽に解析し,診断に利用することを支援するシステムが強く望まれるようになってきている。画像の2値化,座標軸の設定,線分の描画,面積など各種の計測・計算等の汎用の画像処理手法を医療の現場に提供するとともに,医療関係者が利用しやすいようにボタンやメニューを多用したグラフィカルユーザインタフェースを提供するシステムを設計・構築した。
算数文章題は,数式的な知識と言語的な知識を含んでいるため,その解法に関する教育方法が必ずしも確立されておらず,学習者はかなりの数の問題を解くことにより,これらの知識を経験的に獲得する必要がある。したがって教師は,数式的にも言語的にも多様な問題を数多く作成しなければならないという問題がある。
この問題に対処するために,教師が学習させたい数式のレベルを指定しておけば,数式を文章題に変換して出題し,学習者からの解答文を解析し,正誤判定を行い評価するというドリル形式の算数文章題用CAIシステムについて研究している。数式を文章題に変換する際に,市販の算数文章題ドリルを文章解析することにより生成した文章題データベースから問題を生成する方法と,文章生成規則により自動的に生成するという方法を提案した。
遺伝的アルゴリズム(GA)は生物進化の過程をモデル化したものであり,汎用的な最適化手法として,非常に広範囲の応用分野で採用されるようになってきている. GA は,選択指向(selectionism)に基づく最適化手法であると考えられる.すなわち,GA における交叉,突然変異などの遺伝的操作は新しい個体を生成することに寄与し,最適化は,良い個体を選択することによって実現されている.
これに対して,例えば教育によってより優れた人間を育てたり,新しい文化を生み出したりするような社会的進化をモデル化し,最適化に応用するための研究を行う. 特に教育は,選択指向のGAに対して,学習者の短所を改善し,長所を伸ばすという指導を行うため,操作指向(operationism)の最適化モデルとなる.
教育方法の一つに,チームによる教育がある.すなわち,「組織の中から何人かの人を選び出して1つのチームを構成し, チーム内で比較的優れた人が教師となり他の人を教えたり, あるいは互いに教えあうことにより,チーム内のレベルを向上させる」という方法である.この方法をモデル化したものをチームモデルとして提案する.
目的関数が微分不可能である制約付き非線形最適化問題は数多く存在している.例えば,ファジィ制御ルールの学習も,簡略ファジィ推論における後件部パラメータの最適化のみに着目すれば,後件部パラメータの取りうる範囲を制約条件とする制約付き非線形最適化問題として定義できる.
通常このような問題は,目的関数値のみを用いる最適化手法である直接探索法とペナルティ法を組合せて解くことが多い.ところが,この方法ではペナルティ関数の係数をどのような値にすれば確実に実行可能解が得られるのか,現在得られている解候補がどの程度制約を満足しているのかを把握することが非常に困難である.
そこで,制約の満足度をファジィ制約満足度で表現し,通常の大小関係の代わりに制約満足度を考慮した大小関係であるαレベル比較を定義し,この比較に基づき最適化を行うことにより,制約付き問題を制約のない問題に変換するα制約法を提案している.α制約法は直接探索法に適応する方法であり,制約満足度を把握でき,αレベルを1にすれば実行可能解が得られる方法である.直接探索法としては,Powell法,Simplex法(Nelder&Meed)などが対象となる.