差分進化(Differential evolution, DE) は進化的戦略(evolution strategy)の一つであり,Storn and Price[1,2]によって提案された. DE は確率的な直接探索法であり,解集団を用いた多点探索を行う. DE は非線形問題,微分不可能な問題,非凸問題,多峰性問題などの様々な最適化問題に適用されてきており,これらの問題に対して高速で頑健なアルゴリズムであることが示されてきている.
DEの重要な特徴として,進化的戦略ではガウス突然変異のステップ幅を制御する必要があるが,DEではこのような制御が不要となる単純な数学的演算を用いていることが挙げられる. 一般に,ガウス突然変異における理想的なステップ幅は,遺伝子あるいは各次元毎に異なり,また進化の状態によっても異なるため,何らかの方法でステップ幅を適応的に調整する必要がある. これに対し,DE はガウス突然変異の代わりに,基本ベクトル(base vector)と差分ベクトル(difference vectors)との重み付き和を突然変異として採用している. 集団から選択された1個体が基本ベクトルとなり,集団からランダムに選択された個体対の差が差分ベクトルとなる. 世代を経るに従い,解集団が探索空間中で収縮したり拡張したりすることにより,差分ベクトルが変化し,差分ベクトルとして与えられる各次元におけるステップ幅が自動的に調整されるのである.