本論文では、ファジィ制御推論システムの拡張と質的な向上を図るため、コンピュータシミュレーションで、多自由度系のモデルとして二重振子系の倒立姿勢制御を対象に、多自由度不安定系におけるファジィ制御ルールの特性の解析を行なった。 二重振子の姿勢制御は、経験的に、二重振子の全体を一度に見るのではなく、分析的に二つの振子の姿勢を別々に制御するための操作量を推論し、次に推論した操作量の値から系全体に対する操作量を推論するような、2段階推論方法を採った。 この推論方式において、より柔軟性のある制御を実現するために、ファジィ変数のレンジをディナミックなスケーリングという極めて簡単な機構による制御ルールの適応化方法を提案する。
これは、より広い領域の初期値で倒立可能とすることと、より精密な制御で真っ直ぐに倒立させるという相反する要請を満足させるための方法である。 このようにして、コンピュータシミュレーションにより、二重振子の振り上げ倒立を含む、任意の初期角度からの倒立制御が実現できた。 本論文の適応化手法により、ファジィ制御システムは精度のよい、かつロバスト性のある制御を実現することができた。